健康診断時の触診や超音波検査等で甲状腺部分に「しこり」が見つかった際、血液検査や超音波検査(エコー検査)と共に「甲状腺穿刺吸引細胞診」と呼ばれる検査を行います。漢字の通り、針を患部に刺し、細胞を吸引して、その細胞に異常がないかどうかを調べる検査方法です。
痛みや身体への負担もそれほどない検査ですが、あまり聞き慣れない検査方法に、不安に感じる方も多いようです。
そこで、今回は甲状腺穿刺吸引細胞診を行う目的や方法について、詳しくご紹介いたします。
よく聞く「甲状腺」ですが、実際にはどの部分にあるのでしょうか。甲状腺穿刺吸引細胞診について知る前に、甲状腺の基礎知識について解説いたします。
甲状腺は、首の喉仏のすぐ下にある、蝶が羽を広げたような形の臓器です。主にホルモンの合成と分泌を行っています。
甲状腺から出るホルモンは「甲状腺ホルモン」と呼ばれ、胎児期や乳幼児期には発育のため、成人では主に代謝調節のために働いており、生涯を通して必要とされる大切なホルモンです。
甲状腺は濾胞細胞(ろほうさいぼう)と傍濾胞細胞(ぼうろほうさいぼう)という2つの細胞で構成されています。濾胞細胞は血液の中から、甲状腺ホルモンの元となるヨウ素を吸収して、甲状腺ホルモンを合成・分泌する細胞であり、甲状腺の99%がこの濾胞細胞です。残りの1%が傍濾胞細胞で、カルシトニンと呼ばれる血液中のカルシウム濃度調節を行うホルモンを分泌しています。これらの細胞ががん化すると、甲状腺がんが発生します。
甲状腺穿刺吸引細胞診は、患者さんへの身体の負担が少なく、検査時間もわずか数分~10分程度と、非常に短い時間で終わる検査です。近年では日帰り検査も増え、より身近なものになってきています。
ここでは、そんな甲状腺穿刺吸引細胞診が具体的にどんな検査なのか、簡単な手順も交えてご紹介いたします。
まずは超音波検査で甲状腺の内部を確認しながら、がんが疑われる部分に針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で観察して良性か悪性かの判定を行います。針は皮下注射に使用するような細い針を使用し、慣れた施設で行えば1~2分で終了する検査で、入院も不要です。甲状腺がんのうち、乳頭がんや髄洋がん、未分化がんの3つは、甲状腺穿刺吸引細胞診を行うと高い確率で診断ができます。
しかし、濾胞がんや良性腫瘍の一種である濾胞腺腫の細胞は顕微鏡で見てもほぼ同じように見えるため、この2つについては診断ができません。診断と治療を兼ねて手術によって甲状腺を摘出し、さらに細かい組織検査を行う必要があります。
甲状腺穿刺吸引細胞診は適切な標本作製と細胞観察が求められるため、針を患部に刺す穿刺、採取した細胞をガラス板に擦りつける塗抹手技の技術力が診断結果を左右します。そのため、多くの病院では病理診断科の医師が穿刺吸引を担当しています。病理医が担当することで、より正確な診断のために必要な、質の高い標本の作製につながります。
また、穿刺吸引は診断に役立つ位置から正確に細胞を採取しなければ全く意味がありません。針先がどこにあるのかを超音波(エコー)できちんと確認しながら、慎重に穿刺吸引を行います。
特に、甲状腺は血流が豊かな臓器な上、周囲に静脈等の血管や神経が走っていますので、超音波で確認しながら行うことで、血管や神経を極力避け、安全に配慮して行うのが基本です。
穿刺吸引細胞診を行えば、ほとんどの場合、異常がある部分の診断がつきます。しかし、稀に診断がつかない場合があり、生検等ではわかる病変全体の組織像が、穿刺吸引の場合は病変の一部しか確認できません。
従来の経験則等を駆使して、病理医が一部「想像する」ことが必要になります。あくまでも仮定と想像の範囲になってしまうため、疑わしい場合には別の検査を行うことになります。
患者さんへの身体の負担は最も少ない分、診断の正確さも他の検査と比べて劣ることがあります。診断が確定できなかった場合は、他の方法を試みる必要があることも理解しておく必要があるでしょう。
弊社リバース大阪パソロジーセンターでは、上記でご紹介した甲状腺穿刺吸引細胞診を始めとした細胞診の他にも、以下のような検査を行っております。
病理組織検査 (手術摘出材料・一般生検材料・針生検・剖検材料・実験動物材料)
【至急予約検査】
病院様からの検査委託を始め、大学及び企業の研究施設等からの様々なご要望に対しても経験豊富なスタッフによりフレキシブルに対応いたします。また、淀屋橋クアトロアールクリニックと提携しているため、連携病理診断や術中迅速病理診断もご利用いただけます。
甲状腺穿刺吸引細胞診の検査も承っております!ぜひ弊社リバース大阪パソロジーセンターにご相談下さい。