近年、甲状腺がんの罹患率は上昇傾向にあるといわれています。理由としては検査の精度が上がり、発見される確率が大幅に上がっているのが大きな要因とされています。
あまり聞き慣れない「甲状腺がん」ですが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
ここでは、甲状腺がんの詳細や、その診断で実施する検査の流れ等について具体的にご紹介いたします。
甲状腺がんは基本的に、女性に多い疾患だといわれています。一体どのような原因や症状があるのか、詳しくご紹介いたします。
甲状腺とは「喉仏(甲状軟骨)」のすぐ下の気管の前にあり、気管を取り囲むように位置している、重さ10g~20g程度の非常に小さな臓器です。蝶のような形をしていることが特徴的で、甲状腺の裏側には「反回神経」という声帯や、食物を飲み込む「嚥下機能」を司る神経が通っています。
また、「甲状腺ホルモン」と呼ばれるホルモンを分泌する働きがあり、このホルモンは基礎代謝の亢進や脳、骨の成長、脂質や糖の代謝を促しています。他にも、血中カルシウムの濃度の調節に関わるホルモンを分泌する働きがあります。
この甲状腺の一部に悪性の腫瘍ができた状態のことを「甲状腺がん」と呼びます。罹患率はあまり高くないものの、女性の罹患率が男性に比べて高いという特徴があります。また、特定の年齢層がかかりやすいということもなく、若年者から高齢者まで幅広く分布しています。
さらに、甲状腺がんは生涯にわたり健康に全く影響しない、いわゆる「潜在がん」としても知られており、人口当たりの死亡率は10万人に1.5人と他のがんと比べて低く、予後が良いことも特徴の1つです。
明確になる原因は分かっていませんが、若年期の放射線被ばくや体重増加、肥満等が原因の1つではないかと推測されています。また、甲状腺がんの中でも髄様がんと呼ばれる種類のがんには遺伝性による発症も見られるため、血縁者に発症している方がいる場合には注意が必要です。
症状としてはあまり重くなく、首のあたりに結節(しこり)を感じる以外はほとんどありません。まれに、喉の違和感や呼吸困難感、声の掠れ、飲み込みにくさ、圧迫感、痛み、血痰等の症状が出てくることがあります。
甲状腺がんは検査の流れが基本的に決まっています。しっかりと検査の段階を重ねていくことで、甲状腺がんかどうかの確定診断がおります。
どのような検査を行うのか、詳しくわかりやすくご紹介いたします。
最初に視診と触診を行います。喉仏の下にある甲状腺にしこりがないか目で見て、さらに指で触って確認します。正常な甲状腺組織は柔らかく、身体の表面から触れることはできませんが、甲状腺にがんや良性腫瘍ができると、しこりとして触れることがあります。その場合には、大きさや周囲臓器との癒着等をしっかり確認します。
甲状腺がんを血液検査で発見することはできません。ただし、甲状腺がんの1%を占める髄様がんは例外的に2つの腫瘍マーカーを持っています。1つは、人間ドック等でも測定される機会の多い、一般的な腫瘍マーカーであるCEA(carcinoembryonic antigen)です。このCEAは髄様がん以外にも胃がんや大腸がん、肺がん等でも上昇することが多く、これだけでは髄様がんと特定することは不可能です。
もう1つのマーカーであるカルシトニンは髄様がんに特異的なマーカーで、CEAとカルシトニンの双方が高い場合には、髄様がんを強く疑います。
甲状腺がんの診断において最も効果的な検査です。しこり(腫瘍)の有無や部位、サイズの他にも、良性腫瘍か甲状腺がんの区別、さらには甲状腺がんのタイプまで推測することが可能です。痛みを伴うこともなく、所要時間も5~10分程度です。放射線被ばくもなく、妊娠・授乳中の女性でも安心して受けられます。
超音波検査等で甲状腺がんを疑うしこりが見つかった場合、穿刺吸引細胞診検査を行います。超音波で甲状腺の内部を確認しながら、がんを疑う部分に針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で細胞の良性・悪性を判定します。甲状腺がんの4つのタイプのうち、「乳頭がん」「髄様がん」「未分化がん」の3つは、細胞診を行うことにより高確率で診断できます。しかし「濾胞がん」は診断ができません。理由としては、良性腫瘍の一種である「濾胞線腫」は顕微鏡で見てもほぼ同じように見えるためです。濾胞がんと濾胞線腫を区別するためには、診断と治療を兼ねて手術で甲状腺を摘出し、細胞診よりさら細かい組織検査を行う必要があります。
レントゲン撮影した画像をコンピュータで再構成し、人体の断面図を作成する検査です。甲状腺がんと良性腫瘍を区別するには難しいですが、甲状腺がんの周囲の広がりを見る、あるいは肺や骨等に遠隔転移をしていないかを調べるために使用します。
弊社リバース大阪パソロジーセンターは、病理学的検査を主に行う検査センター(大阪市登録衛生検査所第40号)です。
病理学的検査とは、人体から採取された組織や細胞を、肉眼・顕微鏡で観察することで、病気の原因や新興度合い、予後の推定、治療効果の判定を行える検査です。
もちろん、穿刺吸引細胞診検査も承っております。保険医療機関「淀屋橋クアトロアールクリニック」との提携により、連携病理診断も可能となっております。
細胞診検査等の病理学検査については、ぜひ弊社リバース大阪パソロジーセンターにご相談下さい。