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凍結標本とは?実施の方法やメリットについて解説

病理学的検査の手法の1つとして「凍結標本」と呼ばれる作製法があります。ドライアイス等を用いて検体を凍結させ、できるだけ構造や性質をそのままの状態で保存して観察・診断可能な方法です。

では、具体的にどのような方法で行っていくのでしょうか。今回は、凍結標本についての詳細やメリット、方法をご紹介いたします。

凍結標本とは?

凍結標本とは、生物組織や細胞を低温で凍結させた状態で保存する標本のことを指します。この方法は、細胞や組織の構造や科学的性質をほぼそのままの状態で保存できるため、研究や診断に広く利用されています。

凍結標本の主な用途についてご紹介いたします。

病理学的診断

凍結標本は、迅速な病理診断を行うために使われます。手術中に腫瘍等の組織を取り出し、即座に凍結させて切片を作成し、顕微鏡で観察することで、外科医は手術中に腫瘍の性質や境界を判断することが可能です。

組織学的研究

組織の構造や細胞の詳細な観察のために凍結標本が用いられます。染色技術を用いて特定の細胞成分や構造を視覚化した上で研究が可能となります。

分子生物学的研究

凍結標本は、DNA、RNA、タンパク質等の分子を解析するためにも使用されます。凍結保存することで、これらの分子の分解を防げます。

凍結標本のメリットは?

凍結標本のメリットとしては、高い熱やアルコール、有機溶媒に暴露されないため、特に酸素やタンパクアミノ酸等の組織科学的な検出に優れます。

また、脂肪染色が可能であること、電子顕微鏡を使っての免疫組織科学染色の局在観察をすることができるという点もメリットです。

他にも「抗原性の保持」という点において、パラフィン切片に比べて凍結切片法の方が優れている、試料を凍結させてミクロトームで素早く切り出せるというメリットもあげられます。 

凍結標本の作製について解説

様々な用途に使用される凍結標本ですが、作製の手順も一般的な生検の標本作製とは異なります。

その具体的な手順についてご紹介いたします。

手順1.ドライアイス・イソペンタンの準備

発砲スチロール製保冷箱に金槌で適当に割ったドライアイス(-79℃)を入れ、イソペンタンを入れたビーカーを置いて約30分冷却します。イソペンタンが冷えたらビーカーの中にも小さく割ったドライアイスを入れて低温を保ちましょう。その際、ピンセットとサンプル瓶も同時に冷却しておきます。

手順2.組織の凍結

摘出した臓器の余分な脂肪や血餅等を生理食塩水中で丁寧に取り除き、ろ紙で十分に水分を拭き取った後、一辺が5mm以下の直方体となるように、片刃カミソリで整形します。もし小型の場合は臓器全体を凍結します。

組織片をOCTコンパウンドに封入し、組織を区別できるように裏に鉛筆で情報を記載したろ紙の切れ端を添付します。次に、冷却していないピンセット(軍手を介して持つこと)でろ紙の端を持ち、ドライアイス・イソペンタン中に底にぶつけないように注意しながら完全に沈め、激しく泡が出なくなるまで固定します。凍結後は、標本をビーカーの中に落とす・急速に凍結しないと氷晶が粗大化してしまい良い標本ができません。

手順3.凍結標本の作製

クリオスタット、スライドグラス、ピンセット、マッペ、染色かご、デシケーターを準備します。

クリオスタットを薄切りする標本に適した温度(一般的には-20℃)に設定しておきます。次に、ピンセットをクリオスタット内に入れ冷やしておき、標本を入れたプラスチック製サンプル瓶をクリオスタットの中に移し、冷却したピンセットで標本を取り出します。

クリオスタット内のブロック台表面にOCTコンパウンドを少しのせ、ろ紙を下にひいた標本を素早く載せて凍り付かせます。しばらく待って標本の温度をクリオスタット内の温度に合わせ、面出しをした後、アンチロール板を刃に当て、ハンドルを回して暑さ8マイクロメートルまで薄切りにします。

つまみを回してアンチロール板を静かに手前に倒して刃から離し、刃の上に残った切片に接近させます。

前扉を開け、スライドグラスが切片に接触すると、切片はすぐに融けてスライドグラスに接着するため、スライドグラスをクリオスタット外に出し、前扉を閉めます。

切片を添付したスライドグラスはドライヤー(冷風)に当てて素早く乾燥させた後、デシケーター内で冷凍保存します。使用時には、デシケーターごと冷凍庫から出し、霜がつくのを防ぐために全体を室温まで上昇させてから開封しましょう。

凍結標本の作製時に気を付けるべきこととは?

凍結標本の作製時の安全上の注意点は、以下の通りです。

  1. ドライアイスやドライアイスで冷却した器具等を扱う時は必ず軍手を使用すること
  2. イソペンタンをこぼさないようにすること
  3. 凍傷を負った際には、流水にしばらく浸してから医師に診せる等の処置をとること
  4. イソペンタンは引火しやすいため「火気厳禁」とすること

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