病理医が顕微鏡をのぞいている姿はイメージできる光景ですが、その検査対象である病理組織標本についてご存じない方が多いのではないでしょうか。
今回は、この病理組織標本についての詳細や、作製の流れについて詳しくご紹介いたします。
臨床医が採取した組織や細胞をホルマリン固定し、病理に精通した臨床検査着技師が処置をして、様々な工程を経たのちに病理医の診断に適した標本になったものを、病理組織標本と呼びます。
この病理組織標本を「病理医」や「細胞検査士」が顕微鏡下で詳細に観察し、診断を行います。
様々な疾患の治療方針を立てる際に、病理診断の結果は重要な因子となります。
ここからは、病理組織標本がどのように作製され、病理医の手元に届くのか、その過程について詳しくご紹介いたします。
まずは、依頼伝票に患者情報等の必要な情報が記載されているか、提出された検体が依頼伝票の内容と一致しているかどうかを確認します。
確認する内容は、氏名や性別、年齢等の患者プロフィール、検体が何か、個数等です。
近年ではより正確にできるよう、バーコード等のIT機器が使用されています。
ゴム板(ホルマリンボード)や発泡スチロール等の板に臓器を貼り付け、ホルマリンに漬けて固定します。
固定液は通票、10~20%の緩衝ホルマリンを用います。
大きい検体は、切り出し時に適切な大きさにカットしますが、固定不良の場合、組織の自己融解が起こったり、腐敗してしまうため注意しましょう。
次に、臓器の写真撮影を行います。全体像(表・裏)、病変部のアップ、断面等を主に撮影します。
今はデジタルカメラが主流となっているため、枚数は基本的に問われません。
切り出し後は検体がバラバラになってしまうため、写真による記録は重要です。
提出された組織が大きなものの場合、全体の標本作製をすることが難しいケースもあります。その場合、必要な部分を切り出して標本を作製します。切り出す部位は、主病変を中心に行いますが、比較対象の為の正常部分を切り出したり、腫瘍性病変の場合は腫瘍と正常部位の境界(断端)部分も採取したりと、全ての病変部分を取り切っているかチェックします。
不明な点は、担当の臨床医と密にコミュニケーションを取り解消していきます。
切り出した標本は、標本作製のための専用プラスチックカセットに入れます。切り出しの際、カセットに収まる大きさに切りますが、カセット内に切り出した組織を隙間なく詰めると、パラフィン等の溶剤の入りが悪くなり、薄切りが困難になる上、染色性も悪化します。
小さな検体は、ピンセットでカセットに入れます。
組織検体にパラフィンを浸透させるため、検体に含まれる水をアルコールに、次にクロロホルムやキシレンを使用し、最後にパラフィンへ置き換える装置に検体を挿入します。
包埋皿に切り出した組織を置き、そこに溶解しているパラフィン(約60度のもの)を流し込み、冷却してパラフィンブロックを作製します。
「ミクロトーム」と呼ばれる道具で薄切りにし切片を作製します。厚さは通常3~4um(3/1000~4/1000mm)程度ですが、目的により厚さを変えることもあるでしょう。
薄切りにされた切片を、湯冷ましの水に浮かべ、水(またはぬるま湯)に浮かべた切片を、スライドガラスに乗せて貼り付けます。
水に浮かべた切片をスライドガラスにすくい取り、伸展器の上で切片の元の面積にまで膨張させ、そのスライドガラスを約60度の乾燥機の中で乾燥させます。これによりパラフィンが溶解し、スライドガラスから切片が剥がれにくくなります。
検体がパラフィンに浸透したままでは染色されないため、パラフィンを溶かして洗い出します。
次に、ヘマトキシリン・エオシンと呼ばれる染色液で二重染色を行います。ヘマトキシリンは青紫色、エオシンは赤紫色の色素です。
染色後はアルコールによる脱水、キシレンによる透徹を行い、封入剤をつけてカバーガラスで覆います。
最後に封入して標本の完成です。
この標本を用い、病理医は光学顕微鏡で観察し、病理診断を下します。
必要であれば別の染色をオーダーし、別の染色を行う場合もあります。
リバース大阪パソロジーセンターでは、細胞診・組織診等の病理学的検査を承っております。特に、標本作製ができない病院や診療所での病理診断を受託しております。
病理医が不足し、今後も減り続けている中で、検査センターや病院・診療所の病理診断支援を行い、しっかりサポートさせていただきます。
弊社は保険医療機関「淀屋橋クアトロアールクリニック」と提携しておりますので、連携病理診断が可能となっております。