「診療報酬点数」という単語は、医療関係者なら誰しも目にしたことがあるのではないでしょうか。医療機関が受け取る診療報酬のうち、患者が窓口で支払う一部負担金(自己負担額)は1~3割となっており、自己負担額を除く診療報酬を受け取るためには、あらかじめ定められた点数に基づき、適切に請求する必要があります。
その中でも、今回は病理組織標本作製の診療報酬点数をピックアップしました。いくつかの種類がある病理組織標本作製において、どの程度診療報酬点数が設定されているのかを詳しくご紹介いたします。
診療報酬とは、クリニック等の医療機関が行った診療や検査、治療等の医療行為の対価として、公的医療保険から支払われる報酬です。診療報酬は、主に以下の項目に分けられます。
これらは厚生労働省の告示により、公的医療保険の対象となる診療行為の範囲や点数があらかじめ定められており、1点=10円として計算されています。
行った医療行為を積み上げて1点10円で合算した額のうち、医療機関は1~3割(年齢や所得によって異なります)の自己負担分を患者から受け取り、合計額から患者の自己負担分を差し引いた残りの額を、審査支払機関を通して保険者から受け取ることになります。
診療報酬のうち、以下のものは原則2年に1回改定されます。
内閣が医療費の総額(改定率)を決めた上で、国の審議会が策定した基本方針に基づき、「中央社会保険医療協議会(中医協)」が具体的な個別項目についての審議を行います。
中医協は、診療側委員、支払側委員、公益委員の三者で構成され、診療報酬について厚生労働大臣から諮問された際、答申を行う諮問機関です。
診療報酬改定では、病院経営の収支調査や医療経済実態調査、医療品価格調査、特定保険医療材料、再生医療等製品価格調査のような医業経営指標の他にも、経済指標として賃金指数や物価指数等も踏まえて審議が行われます。
ここからは、病理組織標本作製の点数について、作製方法やケースに沿って詳しくご紹介いたします。
組織切片において、以下のものは、区分ごとに1臓器として提供します。
電子顕微鏡病理組織標本作製(1臓器につき)…2000点
電子顕微鏡病理組織標本作製は、腎組織、内分泌臓器の機能性腫瘍(甲状腺を除く)、異所性ホルモン産生腫瘍、軟部組織悪性腫瘍、ゴーシェ病等の脂質蓄積症、多糖体蓄積症等に対する生検及び心筋症に対する心筋生検の場合において、電子顕微鏡による病理診断のための病理組織標本を作製した際に算定が可能です。
1及び2の病理組織標本作製を同一に実施した場合は、180点を主たる病理組織標本作製の所定点数に加算します。
また、8について、確定診断のために4種類以上の抗体を用いた免疫染色が必要な患者に対して標本作製を実施した場合には、1200点を所定点数に加算します。
術中迅速病理組織標本作製(1手術につき)…1990点
術中迅速病理組織標本作製は、手術の途中において迅速凍結切片等による標本作製及び鏡検を完了した場合において、1手術につき1回算定します。
なお、摘出した臓器について、術後に再確認のため精密な病理組織標本作製を行った場合は、上記の病理組織標本作製の所定点数を別に算定します。
PD-Lタンパク免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製…2700点
抗PD-L1抗体抗悪性腫瘍剤または抗PD-L1抗体抗悪性腫瘍剤の投与の適応を判断することを目的として、免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製を行った場合に、当該抗悪性腫瘍剤の投与方針の決定までの間に1回を限度として算定します。
ミスマッチ修復タンパク免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製…2700点
別に厚生労働大臣が認める施設基準に適合しているものとして、地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、ミスマッチ修復タンパク免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製を実施し、その結果について患者またはその家族等に遺伝カウンセリングを行った場合には、遺伝カウンセリング加算として、患者1人につき月1回に限り、1000点を所定点数として加算します。
リバース大阪パソロジーセンターは病理組織標本作製の他、細胞診や組織診、免疫組織・細胞化学検査、術中迅速診断検査等、病理学的検査を主に行う検査センター(大阪市登録衛生検査所第40号)です。
また、近年の病理医不足に対応し、検査センターや病院・診療所の病理診断支援を行い、サポートする体制を整えております。病理診断科を標榜する保険医療機関「淀屋橋クアトロアールクリニック」との提携により、連携病理診断も可能となっておりますので、病理診断の受託をぜひご利用下さい。